AquaSKK プロジェクト::迷っている人へ

AquaSKK を使うのは初めてですか? 「これを使いこなすのは無理かも...」と、早くも諦めムードを漂わせているそんなあなたに、このコラムを捧げます。

日本語入力あれこれ

ことえりや ATOK などのメジャーなかな漢字変換では、日本語の文法を解釈して長い文節を一気に変換できる連文節変換方式を採用しています。例えば、「きょうはとてもよいてんきです」というひとまとまりの入力を、「今日はとても良い天気です」に変換できるのが連文節変換の特徴です。

また最近では、 POBox に代表される前方一致変換方式も注目を浴びるようになっています。入力された文字に該当する候補を片っぱしからリスト表示するというものです。一部の携帯電話に搭載されているので、お世話になっている人も多いことでしょう。

そして AquaSKK では、日本語の文法を一切解釈しない単語変換方式がベースになっています。ユーザが自分の頭を使いながら主体的に変換ポイントを決定することで、非常にスピーディな日本語入力が可能になります。この「主体的」というところが、とても大切なポイントです。

AquaSKK で日本語入力

では実際に、「今日はとても良い天気です」を AquaSKK で入力してみましょう。

最初のKが大文字になっていますね。 これは、ここから漢字変換を始めたいというあなたの想いを AquaSKK に伝える役目を果たします。 当然のことながら「今日」という変換をしたいのはあなたです。 だからあなたは自らの意思に従い、大文字でKと入力するのです。

そのままyouスペースで「今日」を確定したあなたは、続く「はとても」の部分について、一切変換する必要がないことを知っています。そこで、小文字のままhatotemoと入力します。

期待通り、何の引っかかりもなく「はとても」が小気味良く確定されていきます。胸のすくような瞬間です。間違っても、「歯と手も」なんてうんざりするような誤変換を目にすることはありません。

次はちょっと複雑です。「良い」という結果を得るためにまず、大文字でYと入力します。普通の感覚だとこれに続けてoiと入力し、スペースを叩きたくなるところですが、そこをぐっと我慢します。

oを入力したあなたはおもむろに、シフトを押したままiへと指を伸ばします。言うまでもなく、大文字のIです。これは妙な違和感がありますね。入力したいのは「い」だからわざわざ変換する必要はありません。それなのになぜ大文字なんでしょうか。

しばらくしてあなたは、「良い」の送り仮名が「い」であることに気付きます。そうです、「い」は送り仮名です。そして、変換中の大文字入力によって、送り仮名の開始位置を AquaSKK に教えることができるということもあなたは思い出すのです!

「そんなもん知らねーっ!!!」という叫びがここまで聞こえてきそうです。気持は良くわかります。でも仕方がないのです。無駄な抵抗はやめましょう。AquaSKK は基本的に無能です。だから、あなたが頭を使わない限り、先に進むことはできないのです。

無事に「良い」が確定されたのを確認したあなたは「天気」の変換に意識を集中し、 Tenkiスペースと入力します。 最後にdesuと入力すると、可愛らしく「です」が確定されました。 おめでとうございます。これで完成です。

もちろんあなたは、一度もリターンを押さずに済んだことを知っていますよね?

驚き最小の法則

SKK に代表される日本語入力方式は、ユーザがコントロールできる領域を広くすることで、より自然な入力を可能にします。大袈裟に言えば、かな漢字変換プログラムに奪われた「漢字変換の自由」を取り戻しているのです。

制御不能な箇所を減らせば、突拍子もない「誤変換」に驚くことが減り、結果として入力スピードの向上へと繋がっていきます。

まとめ

AquaSKK が万人向けでないことは確かです。

でも、もし今の日本語入力環境に不満があるなら、AquaSKK を試す価値はあります。運良く AquaSKK に馴染むことができれば、誤変換の回数はぐっと減り、文章の途中で立ち止まらずに入力できるようになるでしょう。思考の流れを分断せずに入力できる。この爽快な感覚を、一人でも多くの人に味わって欲しいと思います。

とは言いながら、あまり AquaSKK に依存するというのも考えものです。世の中にはごく少数ですが、AquaSKK に深くのめり込み、一般的な日本語入力方式に戻れなくなってしまった人もいます。何事もほどほどに。

さて、あなたならどんな日本語入力方式を「選択」しますか?